【北海道でJGFAタグ&リリースしたブリ再捕】新たなる課題を抱くこの夏。
ブリ、ヒラマサを追う事で魚種の行動範囲をより詳しく研究したい、そんな思いで北海道に魅了された小生ここ数年離れていた「タグ&リリース」に対する活動を再び行なう様になった。
昨年度はブリ、ヒラマサが日本の国境である長崎県対馬で黒潮に沿ってどの様に行動するのか。対馬暖流で北上する過程が把握出来るのか。これらの課題を持ち、対馬での「タグ&リリース」を積極的に行なって来た。
また北海道のブリ回遊に伴い、温暖化からの回遊なのか、古くからの回遊がありその個体数が増えたのか、などたくさんの疑問を持っていたので北海道での日本海側、オホーツク海側でタグ&リリースを行なって来た。
データを探しながら歩くうちに北海道余市のニッカウイスキー工場内資料館では創業者「竹鶴政孝氏」が昭和16年頃に余市の海岸で釣りを楽しまれていた貴重な資料をみて「ブリ」を両手で持つ写真も存在しており、増々この地域でのブリ回遊に伴う興味が深くなったのだ。
今年4月、嬉しい報告がJGFA若林さんから届いた。
「平松さんのタグ&リリースしたブリが再捕されました」正直嬉しかった。すぐに魚体の成長や回遊ルートを確認したかったのですが、これが更に研究材料を増やしてくれる要素が詰まっていたのだ。再捕報告を下さったのは三重県水産研究所の方(お名前を乗せて良いか確認が出来ていないので伏せさせて頂きます)で最初JGFAを通じての連絡でした。
その方はブリの調査担当者であり今回のデータにとても興味を示していただけ、メールでやり取りをさせて頂く事になりました。
平松慶 様
三重県水産研究所の●●様より、下記のように今回三重県沖で再捕されたオホーツク・サロマ湖沖等でタグ&リリースされたブリに関しまして問い合わせが来ております。
なにとぞ、ご回答のほど、お願い申し上げます。下記のご質問のうち、②の放流報告はこちらのデータベースで検索したものを添付しました。(32件ありました。)
JGFA 若林
—–Original Message—– From: ●● ●● (三重県)
Sent: Friday, April 06, 2018 11:44 AM
To: ●● (三重県)
Subject: Re: JGFA 再捕報告受付平松 慶 様
(CC: JGFA 若林 様)三重県水産研究所の●●と申します。ブリの担当です。
三重県で再捕されたブリがサロマ湖沖で放流されていたことに驚き、
同時にオホーツク海でブリの標識放流を実施された方がいることに
感謝の気持ちでいっぱいです。2017年7月15日にサロマ湖沖で放流されたブリについて、
追加の情報を教えていただきたく、メールさせていただきました。
以下について、可能な範囲で情報をいただければ幸いです。① 採捕・放流場所の詳しい位置(緯度経度または地名など)
② 2017年7月15日頃の釣果と同時期の放流実績
③ その他、関連情報など放流時の尾叉長76cm→再捕時76.5cmについて、
近年はブリの低成長が報告されています。
あまり成長していないことを裏付けるデータになりそうです。
北海道南部の南茅部で日本海区水産研究所が9月に放流した群も、
ほとんど成長していないようです。今後ともよろしくお願いいたします。
=====================
三重県水産研究所 企画・資源利用研究課
●●●●
=====================
※個人情報保護のため、すべての宛先にBCC: で送信しています。
この問い合わせに対し、小生が返信した内容です。
三重県水産研究所 企画・資源利用研究課
●●●●様ご連絡が遅れ申し訳ございませんでした。今回の再捕して頂きましたブリをリリースした平松慶です。
いくつかのご質問、私なりの当時の状況をふまえてご返答させて頂きます。① 採捕・放流場所の詳しい位置(緯度経度または地名など)
緯度経度は正直数値としては分かりません。放流した場所はサロマ湖沖ですが詳しく思い出してみるとサロマ湖横にある「能取湖」から出船し、最初は網走方面でブリを狙い、釣果が伸びなかったので「能取湖」沖に戻り、少しずつサロマ湖沖へと移動して来たのがこの日の釣行状況です。時間はAM5時から12時までの実釣時間でサロマ湖沖に戻って来たのは11時頃だと思います。② 2017年7月15日頃の釣果と同時期の放流実績
こちらに関しては、JGFA若林様からのPDFで私がリリースした北海道ブリの明細が添付してありましたのでそちらをご確認下されば幸いです。
この時期、勢力的に北海道でブリのリリースを行なっており積丹半島でも多く行ないました。またオホーツク海でのリリースされたブリの行動がより分かりたくて紋別沖でもタグは多く打ったと思います。昨年は夏の時期に北海道でブリを狙った日数は32日。オホーツク海側は20日になります。ただ、夏の時期積丹半島(日本海側)でもオホーツク海側でもブリに対して言える事は「極端に魚体が痩せている」と言う事です。
とにかく痩せているのが強い印象で、胃の中に海水を流し込み、何を捕食しているのかを確認してきましたが、本州で補食している様な「胃袋がイワシで満杯」な状況は一度もありませんでした。
これらの情報を自身の釣り雑誌連載記事でも取り上げましたが、ベイトを求めてオホーツク海に回遊しているのか、水温や潮流で回遊しているのか、もまだまだ分からないところです。今年も昨年を越える釣行予定がすでに現時点で組まれているので、タグ&リリースを推奨し現場で打ち方なども他アングラーへ指導しながら進めていきます。
③ その他、関連情報など
エイ出版社ソルトワールド内カラー連載「平松慶のヒラマサワールド」
2016年度の行動報告vol.120(積丹半島).vol.121(オホーツク海)
2017年度の行動報告vol.127(紋別沖).vol.128(今回再捕された魚の釣行含む)これが今分かる情報です。お役に立てずに申し訳ございません。
今年も九州〜北海道とブリ、ヒラマサを狙って釣り歩く時間が多いので、少しでもJGFA及び、●●様の調査にお役になれば、と思っております。平松慶
三重県水産研究所 ●●様より返信です。
平松 慶 様
(CC:JGFA 若林 様)お忙しいところ、ご回答いただき、感謝いたします。
今週は月曜日から調査船に乗船していたため、
メール確認が遅くなり、申し訳ございませんでした。「極端に魚体が痩せている」という貴重な情報ありがとうございます。
近年、ブリの低成長が日本海側を中心に報告されています。
今回の標識ブリ(FL76cm→76.5cm)も低成長の事例だと思います。
餌不足で成長できていないのではないかと想像します。飢えたブリが餌を求めて宗谷岬を越えて、
オホーツク海へ入っている可能性が考えられます。
放流後の標識ブリの移動について、
オホーツク海から宗谷岬を越えて日本海側へ戻り、
津軽海峡経由で太平洋側を南下したのか、
オホーツク海から知床岬を越えて釧路経由で
太平洋側を南下したのか、たいへん興味があります。2013年4月に千葉県沖で放流した電子タグ付きブリが
2014年3月に能登半島沖で再捕された事例があります。
この個体は、6月に津軽海峡を越えて、7月に宗谷岬から
オホーツク海に入り、再び宗谷岬を通過して、
冬に日本海を南下したと、推定されています。今年も北海道でのタグ&リリースを予定されているとのこと、
釣果に恵まれて、昨年以上の放流尾数を期待いたします。標識は今年もアンカー式スパゲティタグをご使用の予定でしょうか?
今回の再捕ブリは脱落せずに、しっかり装着されていましたが、
ダートタグに比べて脱落しやすいと言われています。
可能であれば、少し大きめのダートタグを左右に2本装着すると、
再捕率の向上が期待できると思われます。
ダートタグは、背鰭付け根の担鰭骨に引っかけるのがコツです。
厚かましいお願いかと存じますが、ご検討いただければ幸いです。この度は誠にありがとうございました。
重ねて、お礼申し上げます。
今後ともよろしくお願いいたします。三重県水産研究所 ●●
この様なやり取りをここ数日行なって来ました。
対馬でリリースしたブリ、ヒラマサの再捕報告はまだ確認されていませんが北海道オホーツク海側でのリリース再捕は小生の大きな疑問に対して小さな光が感じられた思いがこみ上げて来ました。
三重県水産研究所の●●さんがおっしゃる様にサロマ湖沖でリリースしたブリがどのようなルートで太平洋側まで移動したのか。
北海道オホーツク海側のアングラーは皆口を揃えて「夏の季節が終わる頃、知床半島を越える事はなく宗谷岬まで戻り日本海側に回遊する。」こう聞いています。
その内容であれば、宗谷岬から北海道日本海側を抜け、津軽海峡で太平洋側へと移動するものだろうか。確かに電子タグでの回遊ルートは研究所の調べで出ている。ただ地図上で何度も確認するが本当に知床半島を越えられないのか。あくまでもアングラーの希望的観測だが(笑)
東海大海洋学部出身のプロアングラーと話す機会があり、知床半島での折り返しについて深く話した覚えがある。
その方も「ほぼ戻り(宗谷岬側へ移動)が強いはず」とおっしゃっていたのだがこの痩せて成長が遅れていたブリの回遊ルートがもう一度青函トンネル(津軽海峡)を抜け太平洋側へと入ったとは思い難い。
これを読んで下さっているアングラー様の意見はいかがでしょうか。
小生が言えることはこの貴重な再捕データをもっともっと増やしていきたいのだと強く感じ今年も昨年以上に北海道だけでなくブリ、ヒラマサを狙いに出たフィールドで1尾でも多くタグ&リリースを行い研究材料を増やしていきたいと思っている。
ひとつの点を地道に増やし、点を線にする努力を忘れないで行動に移していくのみである。
●資料:JGFAタグ&リリースhttp://www.jgfa.or.jp/tr/index.html
●資料:JGFA再補移動図http://www.jgfa.or.jp/tr/route/