冬場水温が低下していくにつれ、体力のある個体の大型なものは動き回る事も出来るが、そうでないサイズは出来る限り水温が安定しているエリアを好む。
これはわかりやすい表現で、この状況になると青物は魚礁(人口魚礁)に着く。
魚礁は漁業が安定した潮流があり魚道となっている位置に設置し、漁場として魚の足を止める設備になるが、我々遊魚船も狙う事が出来る。
魚礁は人口ブロックを沈めたり、また古くなった船(沈船)もある。こうした、魚達のアパート(住処)に小さな魚から大型魚、甲殻類などが生息しているのだ。
海水温が温かければ、捕食しやすい瀬周りのシャローエリアや岩、起伏の激しい地形を選んで生活するのだが、ベイトが集まらなくなる冬の時期は散々したベイトを追い回すよりも、安定した海水温でベイトの居心地の良いストラクチャーに身を寄せるのが生活しやすい、と言えばわかりやすいのではないでしょうか。
魚礁の設置位置は、ある程度水深のある場所になります。青物を狙うなら100m、もちろん魚種によってはもっと深い場所の魚礁もあります。
スピニングタックルのジギングで狙いやすい水深は100m前後。狙える冬の対象魚はサワラ、ヨコワ(規制あり)、ハガツオ、マダイ、ヒラメ、ブリ、ヒラマサ、ハタ類となり、それこそ魚礁でしゃくると何が釣れるのかもわからない面白さも供えています。
そんな場面でヒラマサだけに焦点を絞り、魚種にこだわって狙う面白さがあります。
基本的な話をすれば、中層域をしつこく狙えば、サワラやハガツオなどがターゲットになるであろうし、漁師さんらは潜航版を使い、仕掛けを通す層を決めて漁をしています。
ゆるい動きで探るなら、捕食の下手な真鯛やブリ、ヒラメなどを好んで探る事が出来ます。仕掛け(ジグ)もシルエットを小さくしてやる事で動きをゆるくし、口を使いやすくするのもテクニックです。ハタ類は捕食した時に戻る穴(場所)を持つ性質なだけに、魚礁近くをネチネチと狙う事が釣り分けの技術になります。
ならば、ヒラマサはどうでしょうか。
魚礁位置の潮通し(流れ)がよくなる時間帯はベイトも捕食するプランクトンが広がって流れてくるので、広がっていきます。
ブリの様に群れでベイトを固めて捕食していく食性とは違い、ヒラマサは基本単独捕食になります。魚礁というテリトリーを持っていながら、より広い範囲で捕食行動に出るヒラマサ。
潮が動いていない時間帯ほど、どんな魚でも魚礁に着く。潮が流れ出すとベイトからフィッシュイーターまで全ての魚礁が活発になり、この時がいわゆる「時合い」になるのです。
私はこの時合いタイミングでメタルジグを広く探る様に意識しています。
何か釣れたら良い、ではなくヒラマサを釣りたいと言う頭があり、ヒラマサの食性に合わせた狙い方を展開します。
アクションで説明すれば、ジグの機敏さ、キレのある動き、線を描きながら探る、と言った動きになります。ロッドワークは、シャープにしゃくり、あまりスラッグを持たせずに機敏にジグを動かして誘う。これがヒラマサを狙う秘訣です。
《実証実験》
ある魚礁で一番潮通しがよいタイミングで、同じロッド(リールも)で水切れよいKEI-JIG SHARP 180gとGummy180gとを使い分けてみました。
SHARPはキビキビとしたアクション、Gummyはジグ本質のホバーリングを持たせたアクションです。ここで、見事なまでに釣れる魚種が明確になりました。
水切れの良いアクションをした時にはヒラマサを狙い取る事が出来、ホバーリングを取り入れた緩い動きにはブリ(ヤズ)ばかり口にしてきました。
また魚礁近くに流した時ほどヤズが多く、魚礁から外す勢いでジグを遠投させ探る事で良型ヒラマサをキャッチする事に成功。潮通しが良いタイミングほど、この結果は顕著に現れました。
沖縄などで設置されているパヤオでのマグロ類の狙い方に比例しています。パヤオ近くほど、数は釣れるがサイズが上がらない。広く探る事でマグロやカジキといった、数は出なくても良型の可能性が高くなる食物連鎖のスタイルに今回は見事な程、繋がった訳です。
この検証は面白かった。対馬での魚礁狙いをパヤオゲームに重ね合わせ、狙い方を変える事で忘れかけていた引き出しが開いた訳です。
メタルジグの形状、特性を使い分けた狙い方に、ドンピシャでハマった結果。
もちろん、魚礁近くにも良型ヒラマサは生息していると思います。ただ、ドテラ流しでのスタイルで、ヒラマサを当てているアングラーをみていると、かなり船からジグは遠くで当たっており、ヒットした際は対処が難しく根ズレによるブレイクも何発も見ました。
ブレイクのリスク回避として探り方を変え、パヤオゲームで学んだ知識を取り入れた探り方で良型ヒラマサを連発。これが今回メインに使ったKEI-JIG SHARPでの結果になり、明らかに《線の動作》で探り、ヒラマサの食性を刺激した狙い方での結果になりました。
水切れの良いヘッドシェイプ、沈下速度を速める為のリアウエイト設計、トレースゾーンを安定させるボディーにキール効果を持たせた4面エッジが水深のあるエリアで最高のパフォーマンスを出してくれたのです。
常に実験実証、結果を論ずるまでテストする。私らしい泥臭い行動でしたが、また新しいヒントが身に付いた釣行にもなりました。
こうした結果をこれからも文章にして、たくさんの方にジギングを楽しんでもらえるよう、お伝えしていきます。