【 海洋プラごみ、スタディーツアー参加】パタゴニアスタッフ他と共に対馬へ。

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【 海洋プラごみ、パタゴニア スタディーツアー参加】パタゴニアスタッフ、YAMAPスタッフ他と共に対馬へ。そこで見たものは…。

長崎県対馬。ここは20代後半から「ヒラマサ道場」として毎月に近い、いや月に多いシーズンは2回、3回と通ってきたフィールド。

ヒラマサを求め、マグロを求めて通いまくり、自身の釣り技術を磨いてきたホームグランド。西側、東側とそれぞれ特徴あるフィールドで釣りが展開出来、春夏秋冬ヒラマサと向き合えるフィールドは今も変わらず通っている。

そんな愛してやまない対馬に今回は釣竿を持たず入ってきた。

《第2回 パタゴニア&YAMAPスタディーツアー》。対馬市役所が後援し対馬の海岸に打ち上げられた海洋ゴミ問題を学ぶ、真面目な勉強会。

対馬は国境の島であり、隣国周辺から流れ付く海洋プラごみが大問題になっています。

プラスチックごみ、漁網、漁具、発泡スチロール、ペットボトル…。ありとあらゆるプラスチック製ゴミが海岸に打ち上げられ、ゴミの山で歩く事すら大変になっている始末。

これを何とかしなくては…そんなレベルではなく、国からの助成金で対馬市はゴミ対策に本格的に動いており、ゴミ問題で次に繋がる動きが現在行われています。

簡単に言えば、海洋プラスチックごみ再利用。莫大な量の海洋プラごみ。写真で見ても写し方が下手なので伝わり難いが、この黒い大きな袋に詰まったたくさんが、一年未満で集まる量。これ理解出来ますか?

私は呆然としました。それと同時に理解する事で胸がつまる思いでもありました。

今回、一泊二日の日程でスケジュールが組まれ対馬の海洋プラごみ問題に真剣に向き合って来ました。

パタゴニア

《2023/2/9(木)》

●シーカヤックで徒歩で行けないゴミが溜まるエリアへアプローチ 株式会社CAPPAさんへ

対馬に到着。早々にバスに乗車しエコツアーとしてアクティビティが組まれており、最初にCAPPAさんへ。ここで海洋プラごみへの取り組みを説明してもらう。

どのような物が、どこから漂流してくるのか。そのゴミはどこに滞留してしまうのか。その辺りの説明と、地域小学校や中学校への活動なども含んだ座学時間。
その後、実際にシーカヤックに乗り、リアス式海岸となっている、浅芽湾入り江奥まで向かい、人が入れないような場所での現状把握をしに向かった。

シーカヤックで穏やかな浅芽湾を漕ぐ。普段は18トンの大型船で沖に向かうのが私のスタイルですが、目線が海面のシーカヤック。

パタゴニアスタッフの野田さんと楽しみながら現状を確認してきました。

●グランドホテル昼メシ、何だか通い慣れた場所での昼食にホッとした。

本来なら、シーカヤックで無人島に上陸し、そこで昼食をみんなで頂くスケジュールでしたが、季節風が強かったので、予定変更。

シーカヤックを下船し、どこに向かったかと言うと《対馬グランドホテル》。ここのレストランで昼食をいただく。
※対馬グランドホテルHPより抜粋
その際、ホテル支配人やスタッフらが出迎えてくれた際、支配人は私を見つけて目を丸くしながら「どうしたんですか?」と。

釣竿も持たず、対馬入りをする私って、そんなに変なのかなぁ。お互いが笑ってしまったのでした。暫しの休息で、次に向かいます。

●赤島へ(鴨居地区)。東側沖の位置にあり、車、重機、船などで入り込めない入江のごみ溜まり。

ここに入った時、その状況を見た時に、唖然としました。言葉が出てこない。息が詰まる思いでした。

岩礁に絡みついた漁網やロープ、それにまとわり付くようにビニールゴミが滞留し浮く物全てが波で打ち上げられている。打ち上げられたゴミが重なり、発泡スチロールが砕けて、発泡スチロール粉が舞う。そのゴミ溜め場と化した入江海岸がずっと繋がっているのです。想像を越えていました。ここまで酷いとは…。

人員的作業(手作業)でしか清掃が出来ない。清掃をした夜には、また新しい海洋プラごみが打ち上げられてくる…。それが堆積し、波で叩かれ発泡スチロールは細かく砕け、海に再び流れていく。目に見えないマイクロプラスチック同様に知らず知らずと海を汚染していくのがわかった。

涙が出てきた。大好きな対馬、通い詰めてきた対馬が、これほどまで大変な事になっているとは…。無知だったから、という簡単な言葉では表せられないほどのゴミの量、そしてそのゴミの内容。言葉が出ない。口数が減る。目の前の荒んだ海岸から目を背けたくなる…。

行政も最善を尽くしてくれているのだろうが、次から次へとゴミは溜まっていく姿を目の当たりにして、気持ちは晴れることは無かったのでした。

●対馬クリーンセンター中部中継所

重い気持ちのままバスに乗り込み、次へ《対馬クリーンセンター中部中継所》に向かった。
ここは船で集められた海洋プラごみを分別し、そしてプラごみが再利用出来るようなサイズまで粉砕処理を行う処理場。

バスが到着した際に、真っ黒な巨大ビニールが広大な場所に大量に置かれていた。施設処理場内からはプラスチックを粉砕し、更に次への工程となるチップ状(ペレット)に処理しやすいサイズまでの工程が行われていました。

しかし、その量ときたら…。ここ《対馬クリーンセンター中部中継所》に置かれている海洋プラごみの量は、一年経っていない量だと聞かされました。
またプラスチック処理を行う上で、プラスチックの素材と色の分別を手作業で、更には発泡スチロールも別の工程で処理されています。

発泡スチロールは加熱エネルギーに変えるために細かくした際に圧縮する工程があるのですが、海外から流れ着いた発泡スチロールの内部は異物が含まれており、その確認やゴミなどを取ってからの工程となるので、ゴミが施設内に集積されるスピードよりも、処理をするスピードが追いついていないのだとも説明をいただきました。

また漁具類(養殖海苔などを育てるために浮かしたブイなど)の漂流も多く、分別処理がまず大変で、その後に処理工程、処理したプラ破片を次の工場へ輸送する部分までの人員的作業が追いつかないという事実も知りました。
更に無口になっている自分がそこにありました。

●「まかない家」で晩ご飯

朝から対馬浅芽湾の海洋プラごみから始まり、地獄絵図に映った赤島エリア、更にクリーンセンターでの莫大な未処理で置かれているゴミ量をみて、完全に元気は無くなってしまいました。

赤い万関橋を抜けても、誰も会話はなく途方に暮れているのだろうというのがよく分かります。私は春田拓也船長にお願いして、ヒラマサを分けてもらいました。この日沖に出た際に、1尾釣ってきてもらっていたのです。
少しでもみんなで対馬の美味しさにも触れてもらおう、と勝手に思い、それを晩御飯時に出してもらいました。「まかない家」ここで晩御飯です。
東横イン厳原にチェックインしてすぐに晩御飯。この1日で得た現状把握の時間は強烈過ぎで、楽しみといえば食事しかありません。私が出来る事と言えば、この対馬で育ったヒラマサを食べてもらいたい。それ位しか今は出来なかったので、出しゃばってはいけないと思いながらも、ヒラマサを持ち込み、少しでも今回スタディーツアーに参加された方に喜んでもらえたら、という動きを取りました。

「まかない家」で参加者の方々と名刺交換をさせていただき、海洋プラごみの問題と共に対馬の新鮮なお魚で乾杯。いつまでも続いて欲しいこの豊かな海域。そんな思いは大きく舟盛りされたお刺身をみて食べ、全員が思ったのは間違いありません。

パタゴニア

《2023/2/10(金)》

●美津島の丸徳水産。美津島漁協の方々から現状の磯焼けの問題、またバリ(アイゴ)やイスズミが増えてどうなったのか、等の説明を受ける。

美津島漁協の会場で主に「磯焼け」の現状の説明を受けました。パワーポイントを使い、わかりやすい説明が続きます。その後、漁協の方々と意見交換。ここは私もいくつか質問をさせていただきました。

現状よりも、豊かだった20年前の磯を知っています。藻場にはエギが落ちていかない程、海藻が茂り、その隙間からはアオリイカが連ねてエギを抱こうと出てきた現状。
なぜ藻場が壊滅したのか。原因となる話、そしてこの状況を元に戻したいという願いを努力に変え復旧はどのような事を漁協が行なっているのか、を聞かせていただきました。

私は西側の仁田エリアで夏場に海に飛び込んだ際、その豊かだった海をよく覚えています。美津島だけでは無いのだ、という事を外部の私が伝えなければ…その気持ちでスタディーツアーの方にも知ってもらいたかったのです。

●丸徳水産にて磯焼けを箱メガネ等で実際に確認しに行く。黒マグロの養殖餌やり体験。

アクティビティとして、実際に海に出て、磯焼けを確認しに向かいました。万関橋を通り抜け、箱メガネで海底を観察。ここは毎回通る場所。東海岸に出る航路です。
その先に向かう黒島でヒラマサを釣り、上対馬へと走ります。
毎回通る場所がここまで荒んでしまっている現状を自身が知ろうとしなくては、わからなかった。その事が一番情けなくて悔しかった。

先月もここを通った。意識は沖しかなく、対馬を好く知っていると言っていた自分に恥じました。

海底は、ガンガゼ(ムラサキウニ)が岩礁隙間にいくつも重なり、海藻は皆無。荒野となっていたのです。オキアミ(磯釣りの撒き餌)の防腐剤も原因のひとつではありますが、ここまで被害が広いと、もう驚きと悲しみだけ。「百聞は一見に如かず」胸を締め付けられました。

黒マグロの養殖場で餌やりもさせて頂けましたが、実は私は海底の酷さが辛すぎて、楽しむことができなかった程の落胆でありました。

●「えん」にて《そう介》含む昼ごはん。

対馬空港から降りてきてすぐにある食事処「えん」にて昼食。ここは丸徳水産がやっている食事場で美味しいお魚が食べられるお店。私はお刺身定食をいただきました。

食事メニューも豊富でアナゴ重や天ぷらなども美味しそうだったので、次に対馬入りをした際はそちらを食べてきたい。定食を頂いた末に出されたものが、磯焼けの原因のひとつとなっている、大量繁殖したイスズミ、アイゴ(バリ)を加工し擂り身を揚げた《そう介》も試食させて頂きました。

普段は水っぽい、臭みがある、と避けられているイスズミ、アイゴ(バリ)。海水温上昇に伴い、対馬にも多く繁殖しており、これらが海藻の新芽を食べ尽くしてしまうので、磯焼けの原因となってしまっているのです。

「駆除」という処理は、淡水でも海水でも山林でも自然界全てで人間が勝手に行なっています。でも、魚類だけでなく、生き物への「駆除」とは明らかに人的優先行為だと私は思っています。池の水を抜くTV番組などもありました。その内容について「いいぶさ日記」で書いた際、もの凄いたくさんの意見をいただけました。
【TV番組《池の水ぜんぶ抜く》収録後の、池は…】報道後の実態は⁉️ 2020/2/19更新

【TV番組《池の水ぜんぶ抜く》収録後の、池は…】報道後の実態は⁉️

ブラックバスが悪くて、モロコやカワムツが育たなくなって護岸工事が悪く無い。これが現状の環境処理側の意見です。
ブラックバスだけが固有魚種を食べているから琵琶湖などの漁師が生活できないのだ、ということだけを強調しクローズアップするのだが、実は岸に育つ葦(アシ)などの伐採で小魚類が産卵する、生息域、等を人間が壊している事の事実をあまり公表されない。
山肌が露骨に見える対馬は低植物(草など)が山林に残らず有機物が育たない為、根が無い山肌は砂を含んだ雨水が海へと流れ、栄養素の高い水が作られない。こうした事実が磯焼けの原因にもなっている事も重要なので私はイスズミ、アイゴ(バリ)だけが悪い訳では無いと思っています。

ただ、現状、温暖化の影響も伴って猛烈に増えているのも事実。その間引きとして《そう介プロジェクト》として立ち上がったと説明を受けました。無駄な駆除、これはどうしても納得できませんがこうして食として変化してくれる事の素晴らしさは共感。美味しくいただきました。

《そう介プロジェクト》興味のある方は、ぜひこちらをご確認ください。
https://marutoku-suisan.com/sosuke-prj

●小茂田浜にてゴミ拾い。現状把握視察。

食事も終え、再びビーチへと向かいます。小茂田浜ビーチ。ここも大量の海洋プラごみが打ち上げられている場所(ここだけではないですが、バスが入りやすく駐車場がある)で実際にゴミ拾いを行いました。

この日は、少し前に市業者が清掃活動を行った後だった事もあり、関係者は口々に「ゴミが少ないねぇ」と言ってましたが、私にとっては「ゴミが多く汚いビーチ」に映りました。
流されてきた漁網周辺には釣り糸に絡んだプラごみがここも滞留しています。それをひとつずつペットボトルなどで再利用されたビニールに詰めていきます。

しかし、終わりがありません。海洋プラごみはビーチの砂で隠されていただけ。ひとつゴミを砂から引き上げれば、それに付いていた細かな発泡スチロールの粒が風にまい、散乱する。その横に顔を出しているゴミを手にすれば、同じように連なって次から次へとゴミがついてくるのです。

これを読んでくださっている方、想像出来ますか…。芋掘りの様に、ゴミが砂の中からどんどん出てくるのです。韓国製アナゴ漁具も大量に流れ着いていました。ハングルだけではありません。北京語で書かれたプラごみ、大きなタンク、漁具、本当に多くの海外からのゴミが地底から湧いてくるのです。流木に絡まったロープは厄介です。
派手なエギなどの釣具は釣り針を剥き出しにしており、安易に触れたもんじゃない。釘が打たれた木材も何度も手にしました。これがゴミ拾いで感じた事。

ビーチクリーン、は何度も行ったことがあります。しかし、ここでのビーチクリーンは何十回と行ってきた清掃奉仕で一番驚き、汚くて危険でした。

消波ブロック(テトラポットなどと呼ばれているコンクリートの塊)の隙間には、海底が見えないほどの重なったゴミ。もう、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ…。ここで我が子は絶対に遊ばせたくない。これは本音です。

それほどにひどい状況を行く先々で見て感じたのでした。

●全体ミーティング。ディスカッション。

ティアラ(レッドキャベツの上の会議室)で今回参加した全員で、現状把握とその先に繋がるミーティングを行いました。私はパタゴニアチーム。各テーブルに企業別で分かれ、意見を出し合い、発表します。

海洋プラごみ再利用から新たな生産ストーリー、海洋ごみをエネルギーに代える、ブランドとして認識してく…いくつもの意見が出ました。どれも素晴らしい意見でした。

「そう介」をデパートの食堂に提案する、なんて意見もありましたし、燃料の原料になる事も実際に実現しそうな話を例に出して聞かせてもらいました。本当に今回、胸を撃たれ、言葉にならない現状をこの《スタディーツアー》で実感させてもらえました。

知らな過ぎたもう一つの対馬。国境であるが上にどうしようもない事もあるのですが、隣国と共にボランティア活動も行われており、何らかのアクションは続いています。
しかし、私はこうして初めて体験、経験、視聴したことの大きさに堪らない思いばかりので終わりになってしまいましたが、これでツアーは終わりになりましたが(第3回も予定)私にとっては始まりです。

今からが目を背けずに向き合う戦いだと思っています。
●対馬空港へ。解散、終了。

《まとめ・感想》

皆さんは海を見つめ、泣いた事がありますか。

私は今回初めて、大粒の涙が自然に出てきました。その涙は、自分の無知、そして無力さに、です。

私が対馬へ通い続けている想いは、「いいぶさ日記」を読んで下さっている釣り人なら、みんな知っている事だと思います。

明けても暮れても、対馬でヒラマサジギング、キャスティング。先月1月も入ったし、来月3月も入ります。4月も入ります。TVロケも入ってきます。秋にも何回か予定しています。

これが毎年の私の変わらない対馬スケジュール。

これまでは、船からアプローチしたメタルジグやプラグでヒラマサを狙う事だけに集中してきました。それはそれで大切であり、これからも変わりありません。

しかし、一粒の涙を流した想い、これは絶対に忘れてはいけない思いです。

今回体験した《スタディーツアー》の重さ、大切さを知ったから涙は落ち、気持ちを作り直してくれました。

自然保護目線、商売目線、色々な見方があると思います。私は《釣り人目線》。

対馬の海域でテストを繰り返して製品を作らせてもらい販売し飯を食わせてもらっているロッドやメタルジグ。海への恩返しは、これからの大きな役目です。

現状に対し警鐘を鳴らすだけでなく、行動をする事に向き合っていきたい。

YAMAPスタッフの方々、またパタゴニアスタッフの方々に深くお礼申し上げます。

パタゴニア

尚、今回の様子はRKB毎日放送密着取材にて、後にオンエアされる予定です。日程が分かりましたら、お知らせいたします。

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