【小倉ナイト】陽の沈まぬ熱い街は昭和風情に酔いしれる。動画アリ。前編

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動画アリ。【小倉ナイト】陽の沈まぬ熱い街は昭和風情に酔いしれる。前編

『平松さん、閉場したらココで待ち合わせしましょう』売残り直前で値下げになった焼そばを路上テーブルで食べていた小生に旧ザウラー仲間の入江さんが言う。

あと2時間で今日は終わりか…。
小倉の夜は初めて。過去何度か小倉には来ているのだが、ほぼホテルでゆっくりしていたので街案内を兼ねての出歩きに少しワクワクする小生であった。

言われたとおりに待ち合わせ場所で合流し小倉駅を抜ける様に繁華街へと向かう。

「ここからは、良くも悪くも昭和風情が色濃く残る小倉らしい場所です」

細い路地には単色看板にわかりやすく《ストリップ》や《日活ポルノ》など18禁路地につい懐かしさを感じるのだ。

「ここいら辺は自分(入江さん)らが高校時代から全く変わっていません。怖い輩はかなり減りましたが」笑いながらそんな事を言い、小生の懐かしがり驚いた表情を喜んで見ていた。

「ココではふたりくっ付くのはやめましょう。勘違いされます」同性愛を否定する気は全く無いが興味もない。話のネタに、と写メを撮り次の目的地へと向かったのである。

小倉駅裏は立飲み屋が軒を連れガラスドアからは足下だけが見える。夕方の乾杯を楽しんでいる様子は足の動きだけで伝わって来る。飲みたくなって来た。

『ここに平松さんを連れて来たかったんですよ』

暖簾には平松慶キーワードの『鳥』だなんて嬉しい漢字が目に飛び込んで来て、いよいよやる気スイッチが青色に輝きだす。

暖簾をくぐり「予約の入江です」そう伝えると二階席へと導かれた。カウンターには既に予約の方で満席になっていた。5時半で連日満席のかしわ屋さん。

傾斜のある階段をあがり、「お飲物は?」と聞かれスタートは瓶ビールから開始となった。お互い手酌を口約し乾杯。

小さなビールグラスは子供の頃に親が飲み残したビールの苦さを思い出させる。
好奇心で口にしたあの頃。「お父さんはこんな苦くて不味いものをなんで飲むのだろう…」そんな記憶が蘇る。忘れかけていた、瓶ビールの味。ほろ苦く口に広がる麦の味がやっぱり昭和に通ずる。

入江さんはオススメのメニューを頼んでくれた。オススメのメニューは、メニューに掲げられたものが全て。

9品が大きく描かれており、これだけ。ご飯ものを省けば7品。それ以上はなく、それだけで連日満席なのだ。それがすごい、とビールグラスを口にしてふむ、ふむ。と感心する。

2本目の瓶ビールを頼んだ頃にインターフォンが鳴った。インターフォンも40年前にどの家にも競って取り付けたレトロ感溢れるもの。

優しい音ではなく、しっかりと所在を伝える任務を遂行するブザーとノイズが重なる調理場からの声。
しかし度肝を抜かれたのはそれだけではなかった。

手動エレベーターで運ばれてくる、その術。ドリフターズのネタじゃん、とふたりの会話はその様子に釘付けとなり絡み合わない。
【動画アリ】昭和な雰囲気が最高の配膳エレベーター。https://youtu.be/BKm15I99BQA

下で準備したモノを紐で引き上げ二階席に配膳する。それだけなのだが、この動作がまた昭和なのだ。
目に入るモノ。使われているモノ。それらがどれもあの昭和な頃に戻らせてくれ、なんとも言えない優しい気持ちにさせてくれるのだ。

配膳された《とりわさびあえ》をいただく。軽く炙られた鳥肉と上品なわさび葉が混ぜ合わされたものでひと口した時の豊かな味わいに度肝を抜かれた。
『鳥肉が世界一好きな小生』だなんて剛言して来た自分に恥じてしまいたくなる。刺激の強いのがわさびの武器だと思い、わさび味の侘び寂びひとつ分からずして『鶏にはワサビ』だなんて発した恥ずかしさ。
今ここでそれら各種の失態失言に反省したい。

《とりわさびあえ》は強調されない甘酢に優しく仕上げたわさび葉と刻みのりを混ぜ合わせて食べる。
酢の味も遠く、わさびの刺激もほのか、刻みのりの味がまたよい。気品があり、どうしようもない絶品である。

ビールグラスをぐびっとやり、刻みのりを混ぜ合わせて口に運ぶ。至福の時。何だよ、この丁寧な味は。
《皮酢物》とはまた違う酢の味に交互をゆっくり口に運びながら次のメニューを楽しみにしたのだ。

ガラッガラガラ。がたん。
下から次の品が出来上がって来た。揚物だ。手羽先は一切衣を付けずに揚げてますとお母さんが言う。
50年店に出て毎日が楽しいのだ、と自分の母親と同じ歳のお母さん。

我々は揚物が始まったと同時にハイボールをお願いした。
ウイスキーの配合を目の前でやってくれるのだが「そんなに濃いの?」と思ってしまう。ハイボールは古くから出してるけど、ずっとこうですよ。と50年の技は変わらぬ配合で揚物を更に美味く食べさせるのであった。

とにかく全ての品がどれも上品であり、口に運ぶと我々を黙らせる。そして唸らせる。
口の中で食感、味覚、香りを楽しみニヤリとさせてくれるのだ。


焼き鳥とは表さず《串焼》をゆっくり食べ、揚物に舌を包む豊かな時を楽しませてもらった。

「そろそろ7時になりますので…」次の予約が入っており、これで終わりとなる。
小倉北区京町にある【美好野】。
入江さんも若い頃に給料を持っては通ったお店。昭和レトロを売りにした店作りをしている居酒屋はたくさんあるが、その味、柱の一つから全てを当時と何も変わっていない事をとても喜んでいるのと同時に小生は《わさびあえ》を再び口にしたい記憶を大切にしたのであった。

続く【小倉ナイト】陽の沈まぬ熱い街は昭和風情に酔いしれる。後編へ

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