【ブリを求めて、北の大地へ3】〝平鱒 渓〟絶滅危惧種イトウを求め、山へ川へ。
金曜日の時点でオホーツク海は大荒れになる事が予想されており、早々に日曜日のブリ釣行は中止になっていた。
…悪天候、こればかりは仕方がない。
日曜日はホテルに篭もり「いいぶさ日記」や「YouTube《KEIチャンねる》》更新作業だなと考えていたのだが、有持和也船長からの提案もあり、トラウト狙いに行きませんかとお声がけをしてもらえた。
これは行くしかない。こんなチャンス逃せれないと即座に参加表明。日曜日乗船予定だった加藤達也さんに連絡し、トラウトタックルをお借りする事に。
フィッシングベストとネット、タックル一式をカトちゃんから借り、ウェーダーは有持船長友人の柔道100kg超級のユウキ君が持つ3Lサイズがお借り出来た。
キャップ、偏光レンズ、ウエアー類はオフショアで使っているものが使えるので準備万全となる。
狙う魚は、イトウ。巨大ニジマス。この二種に絞って川に入るとの事。それだけでもたまらなくワクワクする。
前夜、晩ご飯のタイミングで訓子府町から来たカトちゃんと合流し、居酒屋さんへ。川ゲームのサポートをして下さる藤井さん(通称、鷹さん)と伊藤さんから川の様子や位置などを大まかに説明してもらった。
ただ、道北エリアの地理位置が全くわからない私は、ふむふむ、うんうん、ほほうと聞いて相槌を打つ位しか出来なかった。地理感のない悔しさ、まだまだ北海道初心者さんなんですね。
こうして前夜のミーティングで「山川伊藤」への予習ミーティングは終わり、翌日を迎えたのだ。
紋別から2時間程移動。あり得ないと思うほど山岳エリアに進んでいく。
早朝は熊が怖いからと7時にホテルを出発し、10時前位から釣りになった。大きなフキの中に車を止める。
アブがブンブン吐く息の二酸化酸素に寄ってくる。「ババババババ‼️」有持船長が爆竹を鳴らした。私はアブを避ける事に必死になっていたが、ガイドをしてくれている有持船長は、アブよりも熊対策を最初にする。それだけで緊張が始まった。
「熊が多いので、まとまって動きましょう」と。いつもなら、バラバラで川に入り、釣果画像を上げるグループLINEでやり取りしているが、iPhoneを開くと圏外。ホントに山奥に入ったのだなぁ、と感じる。
巨大なフキ林の藪漕ぎから始まり、有持船長、鷹さん、伊藤さんは大きな声を出しながら川に向かって歩き出した。「こりゃ、ホントに大変な場所に来ているな」緊張感が増してきた。
フキ林の真ん中にあるミステリーサークル。あり得ない程の銀バエ。なんとも言えない臭いがそこにした。「熊が休んでた所ですね」と有持船長。更に大きな声を出しながら、川へと進んでいく。
やっとフキ林から抜けたと思ったら、次は笹。フキよりも低い笹が生えた場所を抜けて、やっと川にたどり着いた。いよいよ釣りのスタートです。
腰辺りまである水量で見た目はマッディ。これがベストな状況と教えてくれた。ガイドの有持船長が声を出しながら先行し、私を誘導してくれる。
ルアーを投入するポイントを指示してくれながら、流れに向かって歩いていく。私はスプリーモのモフィ60MSを使った。沈みが早く、コントロールがし易いからお気に入り。
手持ちのルアーがこれしか無かったのもあるが、まずはモフィ60MSからスタート。プラグをキャストする。指示された、流れが澱んだ所を選んで打っていく。
1m程の水深があるエリアで、流れが緩い場所にイトウは付くらしい。プラグを着底させ、ロッドティップで軽く持ち上げる様なリトリーブをして探っていった。
開始10分、いきなり引ったくられる様なバイト。浅瀬に向かって走り出した。慌てて身体が反応する。
ヒット‼️有持船長とカトちゃんがムービー撮影してくれる。腰に収めていたネットを持ち、慌てない様に意識しながら、慌ててランディングしようとする。それ自体が、もう興奮してるのがわかる。
何度かタモ入れにトライしながら、やっとの思いで魚をネットに収める事が出来た。初めて手にした、イトウ。幻の魚と言われている絶滅危惧種に指定されている《イトウ》。興奮が止まらない。
遂に…手にしたイトウ。
もう、気持ちはアゲアゲでアドレナリンは出っ放し。サイズを測ってもらう。58cm位。私にとって、これほど嬉しい物はない。しかも、開始10分。
前日のブリも開始1時間のキャッチであったが、今回は更に早く10分で本命を手にする事が出来たのでした。有難う、とそっと川にイトウを戻す。
釣り場の先行をさせてもらい、仲間達アングラーにも感謝。釣り座をカトちゃんに代わり先行してもらう。
熊が気になってなかなかキャストが定まらないカトちゃん。当然だよね。熊の怖さをよく知っている北海道アングラーだから、余計に慎重になっている。
それでも上流へと進んでいく。後追いしていた鷹さんが流木で出来た澱みの中でイトウをキャッチ。派手なファイトだった。ネットに収まってすぐにリリース。
同じ位のサイズでしたが、これだけ安易にイトウが釣れるなんて。驚きしか、無い。その後カトちゃんもイトウをキャッチ。しかし、ドラグ音を鳴すサイズではなく、本人「イトウ記録最小サイズ更新」と、照れながら笑顔で言っていた。
それから先は水量が多くなり、釣り歩く事は不可能になったので、戻る事に。戻りながらもルアーを打っていく。
私はボトム中心にモフィ60MSを通していく。小さなイトウを追加。カトちゃんはどうしてもニジマス狙いの癖なのか、流心を丹念に狙い、ここでは希少なニジマスをキャッチ。こうして前半戦は終了。昼食をゆっくり取ることになった。
後半は、更に上流域でイトウを狙う。
午後から入ったポイントは、最初のポイントよりも更に過酷な藪漕ぎから始まった。
爆竹を時間差で2回鳴らす。この位置に人間が入ってますよ、と動物達に知らせるためだ。午前中よりも更に大きな声を出しながら、不安定な足場と生い茂るフキの林を抜けていく。
午後からのポイントは、更に不気味さが伝わってきた。ひと気はないが、必ず何かに見られている様な感じがしてならない。
ある一定の距離間を持って、こちらの様子を伺っている気配が相当した。なぜなら流れに向かって歩いているが、その動きに合わせてフキの幹を踏み潰す音がするのだ。
シカかなぁ、と思いながら進んでいく。ルアーを打つポイントは、澱んだ場所。それ以外はもっとしつこく狙いたかったのだが、時間が勿体ない。
※このサイズのイトウは、本当によく釣れた。改めて、北海道の魅力を感じました。
私は小イトウとウグイを2連チャンで釣ってしまった。「ルアーサイズを大きくしましょうよ」とラパラジョイント9cmのド派手カラーに交換。ガイドさんからの指示は明確。
それまで小さなイトウやウグイ先輩になっていた私がラパラジョイントに変えた途端、午前のサイズより完全にデカいイトウが食ってきたのだ。
先ほどアドレナリンは出し切ったので、あまり慌てない様にイトウを寄せる。それでもカトちゃんからタモ入れの際「もう少しリール巻いて」なんて指示が飛ぶ。
言われるがままにキャッチしようとネット片手に必死のパッチ。「船の上でしか、カッコよくない」と昔から言われているが、まさにそう。どうにかイトウをネットに収めてホッとする。
良型2尾のキャッチ。人生初トライでこれ程釣果が出るなんて。
改めて北海道のポテンシャルに驚きと感謝しかない。釣行メンバーみんなから祝福され、直ぐにリリース。
雑誌や映像でみる「イトウ」はメーターオーバーの、もの凄い迫力ある魚体ばかりであったが、こうして山の中で狙うイトウ釣りの魅力に取り憑かれてしまいそう。
大きな魚への憧れは勿論あるが、今回入ったフィールドの雰囲気も、また別な強烈なインパクトで私を魅了してくれたのだ。
もう少し上流に向かい、釣り歩く。ガイドの有持船長、カトちゃんが先行していく。…しかし。
「ヤバい、この先は、危ない」と流域側で立ち止まっている。
近寄っていくと、大フキ林の奥から「バキッ」「バギッ」と地を踏み倒す音がする。有持船長とカトちゃんは大声を出しながら、辺りに存在を知らせる様にしているが。
静寂の中、川の流れの音を聞き、耳をそば立てる。「バギッ」明らかにこちらを気にして、何かから見られているのがわかった。
「本当に危ないです。戻りましょう」と有持船長。すぐ近くにある対岸の樹々に腕を指す。そこは、そよ風で揺れる樹木の様子ではなく、1本の木だけが激しく揺れているのだ。
これは動画にて撮影してあり、画像を拡大して確認すると、樹木の裏で黒い人の様な生き物が木につかまり揺すっているのだ。
その時は見れなかったのだが、明らかに我々は山の獣に威嚇されている。更に周りをまるで囲むかの様にだ。
「こんなに危ないのは、なかなか無いです。すぐ戻りましょう」と車に向かって戻る事にした。
その時だ。
私と有持船長が並んで流域側を早歩きで下り始めた時に「ガガガ‼️バギッ‼️」と左側位置から獣に威嚇された。二人共、これまで出した事の無い声で驚き、流深まで逃げる。
手にしたiPhoneは水没し、私はロッドを投げそうになった。明らかに獣に威嚇されたのだ。
姿こそ見ていないが、そこには獣からの恐怖しか無かった。シカではない。シカなら、わかる。他の仲間が、葉に実った果実を見せてくれ「これを食べに来てるんだ」と。
笹の葉が丸くなった葉をして、その裏に赤い果実が付いていた。有持船長が実を口にしてみると、もの凄い甘さがあると。
川側面をみると、そこは赤い実の宝庫。これがあるから、獣はここを守っていたのか。
とにかくこの場から離れるのが先決。早足で戻り、入川した位置にたどり着き、元来た藪漕ぎをたどり、車へ戻る。
その際、フキ林の中に、行きには無かったミステリーサークルの様に踏み潰されフキが潰されている場所があるではないか。
猛烈な臭さに銀バエが溜まり、明らかに獣が休んだ様な場所が出来ていたのだ。
アングラー全員が凍りつく。皆声を出して、ひたすら車位置まで向かい、今回のイトウ釣りは終了となったのでした。
憧れの魚であった、イトウ。
幻の魚と言われ、絶滅危惧種に指定されているだけに、いつも水族館でしか観る事はなかった。それが今回こうして狙う事が出来、更には手にする事が出来た。
50歳近くなり鱒釣りを覚え、海魚釣りでメシを食べてきた私にとって、鱒釣りは生活の為の釣りではなく、心を豊かにしてくれる新鮮な時間になった。
ニジマスやアメマス、ヒメマスなど河川域での釣りは疲れた気持ちをリフレッシュしてくれ、エネルギーに変えてくれている。
こうした環境を作ってくれている、ブリで繋がったアングラーの皆さんに心から感謝をしております。有難うございました。
※また後日、この模様をYouTube《KEIチャンねる》にて更新していきますので、是非そちらもお楽しみにして下さい。