【モネの池・金色の雲】平松礼二画伯の作品をみて、想う。
愛知大学より初代「名誉博士号」をこの春にいただいた父上。お祝いするタイミングも作れず、胸の中で常にモヤモヤが晴れる事がないまま夏を過ごし、親不孝者な小生でした。
偉大過ぎる父上は殺気すら漂う程にキャンバスに向き、母親さえ作品に集中する父上に声を掛けにくい程の制作日々。
「父上の作品を観に行きたいよな。」
女房とも日頃話しており、名古屋へ向かう機会があったので、家族で観に行く事にした。実は父上の作品は新幹線から観る事が出来る。
名古屋駅手前で停車するために速度が落ちる頃、愛知大学名古屋キャンパスをゆっくり通過する。新幹線の線路に向かって巨大に引き伸ばされた屏風が大講堂(キャンパスグローバルコンベンションホール)に飾られており、新横浜駅から京都へ帰省する女房や次男、大阪へ帰る長男は既に何度も観た様で、観ていないのは家族で『平松慶』小生だけ。
自分の父親の作品を観ていない、観れていない事がたまらなく父上に申し訳なく、今回のチャンスでしっかりと観たかったのだ。
名古屋への移動日、九州に上陸した大型台風18号に向かって神奈川から車を飛ばす。
前線を刺激した台風18号の影響で東名高速道路はずっと雨。愛知県に入ると更に雨量は多くなり、行動ひとつにも足は重くなるばかり。
しかし、尾頭橋にホテルを手配していたので、名古屋駅付近の愛知大学名古屋キャンパスはスグ。小生が生活していた頃の名古屋駅周辺とは想像も付かないほど、近代化されかろうじてわかるのは、当時と変わらない地名だけ。
車のナビを頼りに愛知大学名古屋キャンパスへ向かい、到着。
大学の守衛さんに声を掛けると、嬉しい事に校内を案内してくれると。
新幹線からしか観た事のない巨大な屏風を真近で観える、と嬉しそうな女房。「ジイちゃん、いないの?」と孫らしい言葉を発する次男。偉大なる父上に恥の無いように言葉ひとつにも気を使いながらの小生。
そんな3人は案内される守衛さんの後ろにキチンと付いて行く。大講堂(キャンパスグローバルコンベンションホール)正面に飾られた【モネの池・金色の雲】。
無言でじっと観る。引きつけられる迫力と、優しく描かれた花びら一枚一枚を言葉なく観る。
子供の頃から小生、学校の成績が悪く、通知表を父親に見せた時、キャンバスの筆が止まった時のドキドキ感…。その時の瞬間は、やはり花びらを描いていた。小生は、描く花びらをじっと見るしかなかったのだ。
大学の進路を話す時、結婚の報告をする時、長男が宿った報告、全て父親の仕事場である「アトリエ」に行き、筆が止まる先は花びらを丁寧に描いていた父上。そんな思い出が作品を前にした時に記憶が走馬灯のように駆け巡る。
屏風を見上げる。
言葉が、出ない。守衛さんがこの大講堂(キャンパスグローバルコンベンションホール)で授賞式が行われた時の話をしてくれるのだが、頭になかなか入らない。
絵画を前にし、ただひたすらに子供の頃の記憶と、偉大過ぎる父親の作品に吸い込まれそうになる小生であった。
大講堂(キャンパスグローバルコンベンションホール)を出て、新キャンパスに建てられたモニュメント【愛の塔】もみて来た。
睡蓮が植えられた真ん中に大きく【愛の塔】がある。3面で描かれた【愛の塔】は3面共に違うデザインが描かれており、その迫力や優しさなどもみる事が出来た。
(3面の1)(3面の2)(3面の3)
こうしてやっと、観覧する事が出来た愛知大学名古屋キャンパスの父上の作品。
なかなか最近会えてない父上にこうして作品で会う事が出来、気持ちが落ち着いた小生であり、久々の帰郷時に安堵の笑みが出たのでありました。