【水辺の怪談ー釣り人は見た】つり人社出版部2003年8月1日発行
つり人社からの依頼で、過去に怪奇現象、というか恐怖な体験をフィールドで実際に体験したことがあれば…という原稿依頼が1996年かその翌年位にあり私の体験した内容を寄稿しました。
それがこうして後に1冊の文庫本に纏まり出版していただきました。
【水辺の怪談ー釣り人は見た】アングラーなら一度や二度はこうしたオカルト体験や想像を越える得体の知れない現象と出会ったり…的体験ってお持ちですよねっ。私が紀行した内容は、京都の由良川サーフでシーバスを立ち込み狙っていた時のこと。
真夜中に一人で遠浅のサーフに立ち込んで、周りは当然真っ暗、そんな状況に5時間も6時間もシーバスロッドを振り続けている。当時、河川側はそこそこローカルアングラーが入っていましたが、サーフ側はまず人はいませんでした。
これを書いていいのか、を悩みましたが今から30年近く前の話です、ですのでご理解くださいね。
当時、日本海側のサーフに真夜中べた凪時に入ること自体、地元の方々は嫌っていたんです。福井、京都、兵庫の日本海側…そう、今だから言える拉致問題。その事がみんなに言われていた時代なんです。
「闇夜は、行っちゃダメ…」。
しかし神奈川が実家の私は、そのリアルさをそれほど意識しておらず(意識しないようにしていた)、真夜中のサーフにひとりで立ち込んではシーバスを狙っていたんですね。あまり当時は口にする事の出来なかった話。気軽に口にしてはいけなかったネタ。
仲間は怖がって週末の人が多い時しかサーフに立ち込まなかったのはその理由かも知れませんね。本当にこの内容は簡単に当時口にすることも出来ず、私は黙って釣りに没頭していました。
日本海側の漁師さんは古い木造船が漂流して来た話や、実際にそうした船が沖にいた、なんて事も言っており、今だから思う「怖いもの知らず」で若さだけの無知…。
心霊体験、で文章は寄稿しましたが、本当はその怖さも持ち合わせてビビりながら釣りをしていたのを覚えております。少し話がズレてしまいました。
夜中のサーフは、とにかくリアルに不気味。立ち込んで釣るスタイルで夜光発色するケミホタルライトだけが頼り。それ以外の灯りはヘッドライトしかないのです。
魚がヒットしたらライトを付けてエラ洗いを防ぎながら砂浜まで引き摺り上げてランディングしましたが、やり取り中かルアー交換時位しか灯りはない。フィッシングベストの背に電気ウキを装着し、自身の存在を知らして立ち込んでいましたが、その電気ウキの灯りを気にしてくれてよってくるのは、仲間以外に居なかった。
ヒットしたらまあ80cmはほぼ超えている食べて美味しくフットボールの様に肥えた良型しかバイトがなかったポイントなので毎晩体が持つなら通ってしまう場所だったのだ。
睡眠不足が毎日続き、霊体験とは違う恐怖に常に怯えながらのデカシーバス狙い。海が荒れた日だけは24時間以上眠った事も覚えている。
若かったので眠る事もよく出来て、夜仕事後21時に布団に入り起きたら翌日を越えた夜中だった事もある。もうメチャクチャな時期出会った事は間違いない。
本文中の「か〜ごめ、かごめ〜」のくだりは、まだ記憶の中にある。「釣れたね…」の子供の声も覚えている。忘れられない恐怖。忘れてはいけない怖さ。
そう言った思いを文章で伝えきれていないが、しかし今読み直しても私は怖さを知っているので寒気がしてならないのであった。
現在、このシリーズが販売されているかどうかはわかりませんが、とっても他の内容も怖くて、一度読むと「釣り場の恐怖」が脳裏から離れなくなってしまうと思いますよ。
【データ】
誌名:水辺の怪談ー釣り人は見た
出版社:株式会社つり人社
編者:つり人社出版部
発行者:鈴木康友
2003年8月日初版発行
※本書は、月刊「つり人」の夏季企画「釣り場の階段(1996~)等を編集・
転載したものです。