【カンボジア・ポイペト】地雷エリアに身も心も震え上がる。何も出来ない自身に涙。
「アルキ マワラナイデ クダサイ!」
ガイドのゴンさん(仮名)が言う。
タイからカンボジアへ入り山岳地帯での休息を取りたくて日陰を探そうとしていた小生にそんな言葉が飛んで来た。
うだる様な暑さで湿度もかなり高い。正直、こんなエリアからすぐにでも離れたいほどであった。
しかし移動中のことだったので、従うしか無かった。
残り少ないミネラルウォーターを大切に飲み、喉に染みらせる程度の水分補給でこの状況を忍んだのである。
「ヒラマツサン、ココニ キテ」
ガイドが呼んでいるのでガイドの顔を見ながら近寄ってみる。すると、円を描く様に竹が丸く刺さっており、その回りにはドクロのマークが描かれたビニールテープで覆われ、明らかに「危険地帯」だとすぐに分かった。
「コレガ、ジライ デス」
草むらの奥にも同じ様なドクロのマークが描かれたビニールテープで囲われている竹串枠があったのだ。ここはカンボジア戦争時代の激戦区であった様で、至る所にこういった「地雷未処理現場」が残っているのだ。
それを知った小生、それまでの暑さは一瞬でなくなり、動き回る勇気など持つ気力も無くなったのだ。
すぐにでもこの地帯から抜け出したい。こんな場所での滞在は嫌だ。素直にそう思ったのだが仕事の都合上、ここでのロケが決まっておりどうする事も出来ないのだ。
宿泊する安宿へと戻り、近くの食堂に向かう。
スコールでうんざりする。すると、明らかに「地雷」でだと思われる、片足が無くなった人びとを何人も目にした。
本当に何人も、だ。
食堂がある街はトゥクトゥクが行き交い、日本メーカーのバイクが枯れた音をたてて重なる様に道いっぱいに走っている。
その歩道には片足を無くした老若男女が小生の足を触るかの様に掴み、黙って見上げるのだ。
哀れに思う以上に「なぜ、これほどまでに関係のない人々が今だにこうして苦しまなくてはならないのだ」そう強く思え、涙が出て来る。
しかし、ひとりではないたくさんの老人や子供が見ている手前、ひとりだけにリエルを渡すわけにもいかない。
苦しかったが視線を合わせず、そそくさとその場を退散するしか無かったのだ。
陸路で繋がる華やかなバンコク(タイ)の夜街は今夜も酒とマネーと一晩の駆け引きに錯乱しているであろう。
その同じ空間で垣間見た小生の気持ちは複雑でしかなかったのであった。
●カンボジア渡航回数:1回
●国内通貨:リエル