【オホーツクで食した至福の二日間】思い出すだけでにやけてしまう味に感謝。
旅の魅力はいくつかあるのだが、何処へ行っても間違いなく脳裏に残るモノがある。それが『食』なのだ。
舌で感じ、鼻で香り、眼で刺激され、耳で聞き、喉で安らぎ、胃で満足する。
これら全ての欲と嬉しさが小生の小さな脳みそにコクコクと刻まれ忘れようとしないのだ。
そんな小生ご当地モノを頂けるチャンスが多く贅沢窮まりないので日常生活は飲み歩いたり外食は徹底して控える様になって来たのであるが、今日更新する内容は北海道で食べたいくつかの『絶品贅沢三昧肥大欲確定宴』的内容で綴りたいと思う。
《初夜はザンギに浸る》
講演講習会を大幅に延長して終了し、そのまま北見ロータリーエリアへと向かう。路面はブラックバーンと呼ばれる様に黒くテカッテカッと鈍く光りそれでもたくましく走る車は「やっぱり凄いな」と感心してしまう。
この状況は大したこと無いですよ、と嬉しそうに北見の人は言い、この状況は考えられない、と寂しそうに座間の人は黙る。
どう考えても車では動くことは出来ないのはやはり生活環境の慣れなのだなっと感じる。それを実感したのはすぐのこと。
小生ワゴン車から降りると、さっそく路面が凍て付いておりひとコケしてしまった。氷の上で歩くだなんてやはり相当の技術が必要なのだ、とにやけてしまった。
片足30cmの密着スペースをふたつ備え、合わせて60cmで身体を支えようとしてもそんなこと無理。氷の上と畳の上は小生にとって良く似た場所だ、と受け身を取って身体を守りながらお店に入っていく。
そこはお寿司屋さん。講演講習会に参加して下さった方々との懇親会であり、ビール、ハイボール、酎ハイ、日本酒、何でもありのお鍋、お刺身、和え物に揚げ物、と次々と振舞って頂ける。
ただ、飲み物は「飲み放題」になっておりその都度自身が好きなものを好きなだけ取るシステムだから気が楽であり、自身のペースで乾杯が何度も出来たのだ。
ここで気付いた。
小生はラグビーシャツで厚手の生地モノを着用していたのだが、皆さんなぜか「Tシャツ」なのだ。この寒い環境で小生が居るから張り切ってくれて気合い入れてるのかなっと思うのだがそうではない。
普段から「屋内はTシャツなんですよ」と教えてくれる。
ふむ、ふむ。道理で厚手のラグビーシャツを着た小生は「熱い」のだ。暖房を切っても「熱い」。おしぼりで額の汗を拭きながらグビッグビッ、とやる真冬の姿がこれまた生活環境の違いを体感し、ニヤッとしてしまったのだ。
食べ物が次々と運ばれて来る。どれもこれも美味しいのだがやはりあったよ、出会えたよ。お寿司屋さんで「ザンギ」スタイル。
これがなくちゃ!と少々慣れた言い方をしながらお皿にザンギを盛り、それまで飲んでいた札幌ビールをやめて「ニッカウヰスキー」をキツめの炭酸で割る。
そして「ザンギ」をガブっとやり、ハイボールをグビッ、として周りにバレない様にひとりガッツポーズを小さくしたのであった。
その後、場所は変わりいわゆるスナックでまた飲み直し。
小生はハイボールを飲みながら「ジギングとは…」など一切せず、日常茶飯事な出来事を楽しく話しての時間であった。
午前様となり、これでホテルだなっと思ってもそうはいかない。
「ラーメンっしょ」と始まり紅い暖簾をくぐり結露でびっしょりとなったガラスドアを開きまた再びTシャツ姿のあんちゃんを見つけながら「味噌ラーメン」を大盛りにしてもらい注文した。
札幌滞在中はほとんど「塩ラーメン」ばかりを選択して食べているのでホンちゃんな「味噌ラーメン」には出会えたことが無い。
新千歳空港でも味噌ラーメンはもちろん頂いたのだが、小生が思う本物の「味噌ラーメン」とはペンギン歩きで耳が痛くなる様な状況で身体が冷えきって全ての準備と体制が整ってから「味噌ラーメン」が食べたかったのだ。
空港で食券を購入し、北京語が飛び交う状況、子供がワイワイ騒ぐ環境、スマートフォンを触りながらログしてラーメンを食べている状況が小生の求める「本物の味噌ラーメン」ではないのだ。
寒くて身体がガタガタ震え、気持ちよく酔っぱらい、勢いで餃子まで頼んでしまう様なスタイルこそ「本物の味噌ラーメン」であり、まさに「今」なのだ。
「本物の味噌ラーメン」は登場した。
少し油が残るカウンターにドン、と置かれ割ばしをキシキシして両手を合わす。ニヤニヤしている小生がそこには居る。
チレチレな黄色い腰のある麺を割ばしで摘み、欧米人が耳を塞ぎたくなる様な吸い込む音を思いっきり立てて口に入れ続ける。これぞ、求めていた「本物の味噌ラーメン」だ。
こうでなくては、と喜びを感じているのもつかの間。さてこの「北海道バター」はどんな場面で溶かしていけば良いのだろうか。
最初のひと口を啜る前に定義があるならば、先に味噌スープと混ぜ合わせるべきであったのか…「北海道バター」の存在を雑にしてしまった小生、フタクチ目の前に割ばしで突つく様に味噌スープに馴染ませて、それから再び勢い良くチレチレな黄色い麺を音と共に吸い上げていったのであった。
酔い加減最高。ホテルまで口の中で味噌ラーメンはしっかりと支配しており、歯磨きが惜しむほどの美味さに満足し、床についたのでありました。
《北見の焼肉》
2日目も講演講習会を満員御礼で終了出来、この夜は実行委員の方との打上げで昨年夏に「必ず再び」と心に決めたお店に連れて行って頂けたのだ。
「焼肉 仁」。まだ若いブリアングラーの店主リョータさんが最良の眼を使いお肉を仕入れ、これまたひとを喜びの頂点にさせてくれる様な部位で焼肉タイムを楽しませてくれる。
リョータさんのお母さんが最初に飲み物を聞いてくれたので、まずは生ビール。生ビールで乾杯し、お肉を切り終わるまではキムチを充てに今回の講演講習会を振り返った。
この講習会が座学であったので、その内容を基に次は実釣会に繋げていきたい。ここの港を解放してもらい、帰港後はそこで肉を焼きましょう。翌日は「熊を観に」いきませんか、と話しはどんどん膨らむ。
今回来て下さったお客様への配慮を次に繋げ、徹底したケアを考えられていることが小生も嬉しい限り。こうやって繋げることと、北見在住のアングラーの活性化、盛り上げて人を増やす、という努力を強く感じ取れることが出来、小生もこうした講演講習会をさせて頂けたことへの感謝を忘れない。
そんな話しをしている時に分厚く迫力のあるお肉が大皿に盛られて登場した。そのタイミングでハイボールをお願いした。
実行委員の佐藤さんが部位をひとつずつ説明してくれ、分厚いタンから七輪の網にどっと載せられパチパチと焼ける音に魅了される。
焼き上がりは「肉が汗をかき出す時」が大切だ、とある先輩が言っていたがまさにそれで、汗が肉の額に大粒で浮き出た頃にトングでガシっと挿み反対側にする。すると汗が炭に落ち、匂いが煙の中で食の欲を刺激し始める。
もう、口の中は「タン」が入って来るのを今か今か、と焦らせる。
「いただきます」。
何ともその分厚い迫力に舌をまくほど。タンが人の舌の上に乗り、奥歯で噛み締めると肉ジル、いやタン汁が舌の上に広がるのだ。舌の上で贅沢な舌の身を味わう。いやはや、絶品であっぱれ!と声に出して喜びたい程であった。
塩コショウでお決まりの味付けをし、ガブっと遠慮なく口に入れ続ける。その時々に「ハイボール」でグビッとすると、また焼けた「タン」をエイヤッと箸で掴み、口に運ぶ。至福の時である。
「サガリ」が出て来た。
ニンニクがたっぷり効いた醤油ベースの甘辛いタレにちょっと付けてパクッとする。「タン」の凛々しさがありさっぱりした味とはまた違い、肉肉しいギュッとチカラが出て来る味が刺激的なのだ。
お米が欲しかったのだがもっとお肉が食べたかったのでキャベツベースのサラダを交互に頂くのだ。
この食べ方だとお肉の量と野菜の量が平均して取れ前回頂いた時もそうであったのだが翌日の胃のもたれがないのだ。
スッキリ快便で過ごしやすい翌日を前回得ていたので、同じサラダを3皿も食べてしまった。
お肉を頂きながら激しく論じた場面もあったり、しかしやっぱり「オホーツク海」のこれからをみんなも真剣に考えていて、それに少しでも小生が貢献出来れば、と感じたのだ。
いつしか気持ちよくなり、2日間の緊張からか寝てしまった小生。店主リョータさんが「慶さん、終わりましょ!」と起こして下さり、ホテルへと戻ったのでした。
翌朝はお昼の便で羽田空港に向かう便だったので女満別空港で最後のラーメンで締めることになった。
「慶さん、味噌ラーメンで良いですよね」その言葉にメニューに書かれた「鶏」という文字が目に止まり「鶏味噌ラーメン」を頂くことに。
やっぱり同じ黄色のチレチレな麺に味噌スープがあったのだがここでは「北海道バター」は乗っていなかった。メニューには「トッピング」と記され店主のお決まりで載せられて来るスタイルではないのだなっと黙ってラーメンドンブリを覗き込みながら納得して雪の北見から羽田へと向かったのでした。
今回は実釣がなかった旅。日中は常にお客様への配慮と講演講習会のことで頭がいっぱいであったが、夕食のひと時は「至福の時」でありやっぱり旅は欲による五臓六腑の刺激となる時間なのだなっと感じたのでした。
続く