【魔王】を温めて飲み、アワビを捌き、ナマコは酢の物で。海産物万歳な夜。
九州の仲間から海産物が送られて来た。とびっきり新鮮な海産物だ。さらに焼酎も。
たまらなく嬉しく、さっそく頂いたのである。
海産物を送ってくれた釣り仲間のご実家が漁師で糸島半島周辺で一緒にジギングをしていると「あれ、オヤジの船です」と普通に言うモノだから何度か驚いた覚えがある。
そんな彼は仕事の都合で沖縄本島に転勤になったり、山口に転勤であったり、と数年で地方を移動する環境で聞いていても大変だなぁ、と思ってしまう。
慌ただしい転勤状況を聞いてみると「まあ、慣れたものですよ」と。転勤の無い小生の職種は毎日が移動ばかりだが、家族全員が移動して新天地での生活…も本当に大変なのだろうと自身に置き換えて考えると想像ができない。
そんな釣り仲間の彼から送られて来たのが大きなアワビにサザエに赤ナマコ。共に福岡で取れたもので新鮮な状態での梱包に感謝である。
まずナマコを捌く。ナマコはお腹の部分の内蔵を取り、ぶつ切りにして甘い酢に漬けるだけのシンプルな処理。
このナマコが大好物な小生。家族では小生が大半で女房が少々、次男が「むぅ〜りぃ〜」であり、お父さん独り占めに近い環境で晩酌のアテとなる。
冷蔵庫でしっかり冷やしておき、その間にアワビを捌くのだ。
アワビの捌き方は対馬の春田船長から十二分に指導してもらっており、そこそこ手際良く出来た。ただ、アワビのお刺身もコリコロした歯ごたえで美味しいのだが、全部をお刺身にすることも芸が無いので10個ほど捌いた状態からバター焼きで頂く事にした。
バター焼きにすると身が柔らかくて上品な味になる。磯磯していないのが次男も喜ぶので、あの「磯磯風味」をバターと塩コショウで和らげて調理準備完了となったのだ。
芋焼酎『魔王』をお湯割りでいただく。水、炭酸、ロックとそれぞれ季節に合わせた飲み方をするが、この日はなぜだろうかお湯割りにしたいと感じ、思いのままにお湯割りを楽しむことにした。
陶器のお椀に熱い湯を入れ『魔王』を足す。割り方は5:5。ザラついた陶器のお椀に口を付けると蒸気にモワッとむせるような芋焼酎の香りがする。これが好き。熱いかどうかを確認しながらゆっくり口に含み、ゴクリとする。喉から胸にかけ、更に胃に落ち着くのが確認できる。
「旨い…」あらためて酒飲みなんだな小生は、と思いながら箸でツルツル滑り挟みところが難しい酢ナマコを口にやる。
奥歯でぎゅーっと噛む。甘酢の味が口に広がり、硬すぎず柔らかくない「食感」を楽しむ。それに合わせて、またゴクリ。
女房はお刺身にしたアワビをコリコリ言わせながら食べ、塩コショウとバターで絡めたアワビステーキにご満悦。
美味いモノを食べ始めると会話がなくなるものだ。味を少しでも長く舌で感じていたいので黙って美味さを楽しむのだ。
「美味しい!美味しい!」を連呼出来る状況とは運動後の空腹時にガツガツとハンバーグやら焼肉やらを白米にどかっと乗せ、がぶっと口いっぱいに入れてモグモグする時に「美味い!美味い!」となり、ひと口を大切に味わいたい時には黙って頷く様に心の中でニンマリと喜ぶのだ。だから声が出てこないのだ。
福岡からの海産物。これを引き立てる『魔王のお湯割り』にヨイチクリとなった贅沢な我が家の晩餐であった。
「弟(皆、彼の事を平松慶の影武者もしくは弟と呼ぶ)よ、本当に感謝しております。ありがとう。」