【台湾・墾丁】恐怖のエンジンルームで12時間。目覚めたそこは、国境であった.。

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【台湾・墾丁】恐怖のエンジンルームで12時間。目覚めたそこは、国境であった.。

23時、台湾最南端の港に到着し身分証を渡される。北京語で書かれた書類は何が書いてあるかはわからない。

車に詰め込んだ釣具と4泊分の食料や飲料水を手分けして出し船縁に並べる。ポリスだろうか。制服を着た数人が我々の荷物、身分証、全身を光量の強いライトで照らし確認している。

仲間のケイン(仮名)がポリスと話す間、我々はチェックが済んだダンボールに詰められた飲料水や乾麺など食料を
船に積み始める。
ケインから日本人の私は『ダレニ ナニヲ キカレテモ コトバヲ ハッシテハ イケナイ』と最初から言われており、
先に船に乗り込んで荷受場になる操舵室横に付いた。

次々運ばれてくる食品類。飲料水はデッキ周りに山積みに置く。
そうこうしているウチに『ケイチャン モウ ダイジョウブ』とケインが言ってくれホッとする。

しかしポリスは船着場から一向に離れようとせず、船首にライトを当てたり、我々のタックルを照らしては何か伺って
いる様にも思え、気が気でなかった。

キャブレターがかぶったような音のエンジンがかかる。船長はくわえタバコで係留してあったロープを解き、ゆっくりとバックを入れて船体を港でUターンし、そのまま沖へと向かったのだ。

※いわゆる「パイプ船」である。これと同じ船で生活した。

エンジンの上で一夜を過ごすことになった。初っ端から過酷だ。ひたすら、耐えるしかない。
私はエンジンルーム上のサウナ状態な隙間で朝を迎えた。徹夜で船長は船を操縦し、その間暑さに耐えながら身体を休めた。

濃紺で星が美しい空は紫色の空へと変わり黄色がどんどん強くなり朱色は辺りを輝きにする。そこで船は動きながらであるが朝食を作り出す。朝からお湯を沸かして乾麺だ。

インスタント食品の生活がスタートだ。菓子パンや麩菓子のようなもの、ポテトチップスなどもある。魚をストックするための棺桶みたいな馬鹿でかい氷入れがクーラーとなっている。それが3つ船には積まれており、そのどれにも氷だけはびっしりと用意されていたのだ。

ジュースやビールは詰めるだけ詰め込んだ。最初だから魚が入っていないので、そこは冷蔵庫になっているがこの先どうなるのだろうか。

朝食を取り、甲板でダラダラして時間を潰す。さらに昼食も乾麺で味を変えただけであったので、すでに飽きが来そうだ。
移動中、目の前のナブラでカツオを釣り、それを捌いてキンキンに氷室で冷やしておき、移動中のアテとなる。
カツオだけじゃなく、キハダもそこら中で湧いているので、食べたい分だけ釣り、捌いておいて酒のツマミにするのだ。自給自足に近い洋上生活。強烈な生活だ。

到着地は14時を過ぎる位だろう、とケインは言った。途方もなく船は進む。船、といっても塩ビパイプをイカダの様に結びあげて、強烈なエンジンとGPSやら操船するに必要な機器が設置されただけの船。

シャワールームもなければ、当然トイレもない。ウンチがしたくなったら、海にお尻を出して勢いよく「ブリッ」とやり、バケツで海水を汲みお尻を洗う。
皆、同じ行動をするので恥ずかしかったのは最初だけ。あとは、気にしない。

そんなパイプ船で向かったのは、台湾とフィリピンとベトナムとが領土を主張する場所であり、その場所についた時には、完全な軍艦、いわゆる大砲が積まれたデカい船がこっちに睨みを利かせて監視されているのだ。

明らかに監視されている。

でも私達が乗船しているのは台湾の漁業で使うパイプ船。そこに軍事的要素のあるものなど積んでいないだろう。
どんな漁業をするんだ?チェックしてやろうぜ的視線を感じたのであった。

到着までホント長かった。パイプ船で移動時間が12時間。今ならスマホなんかをイジって時間潰しも出来るかもしれないのだが、当然そんなものなど、ない。まあ、電波もないのだが(笑)

海を眺めながらビールを飲み、眠り、起きてオシッコを出してカツオを食ってビールを飲み、眠りインスタントラーメンを食べてビールを飲んで寝て、の繰り返し。

エンジンルーム上の空きスペースでは暑さと熱さで寝られるわけがない。少しの日陰に身を置いて、ビールだけは冷えているので飲み続けての移動だったのだ。

晩御飯は、鍋だった。中華ベースの鍋だから美味い。なんだか美味いのだ。身体は直射日光で焼けて火照り、首筋がやたら痛かった。
飲み過ぎに感じたビールだが、中華ベースの鍋とお供にいただけば、やはり美味いのだ。

空をみる。プラネタリウムよりも綺麗な星空が頭上いっぱいに広がる。

水深80mの瀬にアンカーを打って船を止めているので、風が変わればこっち向き、また風が吹けば船は動かされ、と荒れてはいないのだが船の動きが少し気になりながらも船の適当な平らな場所にダンボールを敷いて眠るのだ。

そうそう、シャワーがないので海水でまず体を洗う。シャンプーで全身を洗ったら用意してあったポリタンクの真水を頭から被り、終了。もちろん歯磨きも同じ。

それでも寝る前にシャワーを流すのは気持ち良く、火照って疲れた身体には最高だった。

翌朝も太陽が登り始める前には目が覚める。まるで鶏のような生活だ。乾麺に中華ドンブリの素をぶっかけて味を変えて食べる。
中華の大鍋でお湯を炊き、豪快に乾麺を見るのだ。これこそまさに中華なのだ、とひとりで言ってたのを思い出す。

すっと木の葉のように大海原で揺られ、海軍の監視船がずっと近付いてきたりして怖かったが。ドンパチはないので安心。
でもずっと大砲を向けられてるのって嫌なもんだね。

こうして4日間の洋上生活は終了した。私だけでも狂った釣果であり、往復の飛行機代が出ちゃうほどだった。

港に戻り、まずシャワーをさせてもらい、冷たいビールとおつまみを口にした時に「無事に戻ってこれてよかった」と思ったのでした。

ゆっくりと「台湾ビール」を飲む。脂っこい肉炒めがやたら美味かった。

●台湾渡航回数:20数回
●国内通貨:台湾元、ニュータイワンドル(NTDollar)

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keitanhiramatsu